2011-12-10 応用数理シンポジウム2011 -大規模災害と応用数理-
会場: 東京大学工学部 6号館3階セミナー室AD
概要: 2011年を振り返り,数理技術がいかに大規模災害の研究や対策で用いられているかをお伝えするシンポジウムです.
日程 |
2011年12月10日(土) 13:30-17:00
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会場 |
東京大学工学部 6号館 3階セミナー室AD
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主催 |
日本応用数理学会
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本文 |
2011 年は東日本大震災,すなわち,3 月11 日に起きたマグニチュード9.0 の東北地方太平洋沖地震とそれに伴う大津波等による大規模地震災害が発生した年として記憶されます.
これにより多数の方々が犠牲となっただけでなく,農業,水産業,交通,生産,物流,電力,通信等の地域社会の主要産業や社会の基盤となるシステムが深刻な被害を受けました.
また,地震と津波によって福島第一原子力発電所において炉心溶融事故が発生し,大量の放射性物質が外部に放出されました.
今後のエネルギー問題や環境問題への影響は量り知れません.
一方,9 月3 日に高知県に上陸した台風12 号,同21 日に静岡県に上陸した台風15 号によって大規模な豪雨災害が生じました.
大規模災害が立て続けに発生した2011 年は,我が国の将来を変えてしまう年になるともいわれています.
大規模災害の予測,分析を防災に活かすこと,大規模災害への迅速な対応により尊い人命や産業,財産を守ることは諸学会に課せられたとても重要な課題です.
日本応用数理学会は,1990 年の創設以来,応用数理分野の研究を通じて社会や産業界に貢献してまいりました.
未曾有の大規模災害に見舞われた2011年を振り返り,シミュレーション,統計科学,情報科学を含む広い意味での数理技術が,いかに大規模災害の研究や対策で用いられているかをわかりやすくお伝えするシンポジウムを企画しました.
研究者・技術者の皆様,研究者・技術者を志す皆様のご参加を歓迎いたします.
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プログラム |
13:30
開会 萩原 一郎 会長 挨拶
13:40-14:20
地震学と地震工学のシミュレーション
堀 宗朗 氏
(東京大学・地震研究所・教授)
地震学と地震工学のシミュレーションは、地殻内の地震波の伝搬と構造物・都市の地震動応答を再現・予測するために使われる。
シミュレーションでは、固体連続体の力学に基づく初期値境界値問題を数値解析することになるが、詳細が不確かな地殻・地盤構造のモデル化や亀裂の発生・進展による破壊過程の取り扱いには、数理的な工夫も重要である。
この点を強調し、京計算機の利用を念頭とした地震学と地震工学の先端的なシミュレーションの現状と課題を紹介する。
14:30-15:10
原子力事故時の放射性物質拡散シミュレーション
永井 晴康 氏
(日本原子力研究開発機構・原子力基礎工学研究部門環境動態研究・グループリーダー)
東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い放射性物質が環境中に放出された。
大気への放射性物質の放出は1カ月以上継続しており、大気中を拡散する過程で降下し、広範囲に地表沈着をもたらした。
海洋については、汚染水の直接放出と大気から海面への降下物が海流により輸送され拡散するとともに、一部は海底土に蓄積している。
このような事態に対処するためには、放射性物質の拡散と沈着状況を正確に把握する必要があり、環境モニタリングによる実測と拡散モデルを用いた数値シミュレーションを相補的に用いた予測と評価が有効である。
このような数値シミュレーションの原子力災害対応への活用について、原子力機構での適用事例を紹介する。
15:20-16:00
地球温暖化の影響と対策
甲斐沼 美紀子 氏
(国立環境研究所・フェロー)
温暖化の影響で,世界各地で猛暑や大雨といった異常気象が深刻化しており,温室効果ガスの排出を削減することが急務とされている.
国立環境研究所では京都大学と共同して温暖化対策を評価するアジア太平洋統合評価モデル(AIM)を開発してきた.
AIMは温室効果ガス排出モデル,簡易気候モデル,影響モデルから構成されている.
AIMモデルはIPCCが2000年に発表した社会経済シナリオであるSRESシナリオ,温暖化対策を考慮したPost-SRESシナリオの開発に用いられてきた.
AIMモデルを温暖化対策評価に用いた結果などについて紹介する.
16:10-16:50
台風のシミュレーションと予測
杉 正人 氏
(海洋研究開発機構・IPCC貢献地球環境予測プロジェクト・グループリーダー)
本年の台風12号では記録的な豪雨による土砂災害、浸水、河川のはん濫等により、和歌山県、奈良県、三重県などで大きな被害が出た。
このような豪雨災害が起きると、しばしば地球温暖化の影響が話題になる。
台風に伴う豪雨や高潮等による人的災害を軽減するためには、適切な予測のもとづく避難が有効である。
現在気象庁で行っている台風の予測は、大気の数値シミュレーションモデルを用いた数値予報にもとづいて行われている。
講演の前半では、台風の数値予報の現状を紹介する。後半では、数値予報モデルと同様の数値モデルを用いて行われている台風の気候予測の最近の研究を紹介する。
16:50
閉会
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問い合わせ先 |
中村 佳正 副会長
e-mail: ynaka i.kyoto-u.ac.jp
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ポスター |
ポスター
(pdf, 200KB)
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