日本応用数理学会 第4回 若手優秀講演賞 (2007年度)

日本応用数理学会では,年会の一般講演ならびにオーガナイズドセッションから若手研究者(当該年4月1日現在で35歳未満)で優れた研究成果を発表した講演者を「若手優秀講演賞」として表彰しております. 2007年度は,以下の6名の方が受賞されました(敬称略,50音順). 表彰式は,2008年4月の総会において行われます.

受賞者 受賞講演について
岡山 友昭
(東京大学大学院情報理工学系研究科)
[講演題目]
   弱特異な第二種積分方程式に対するSinc数値計算法の理論解析

[講演概要]
   弱特異なVolterra型第二種積分方程式に対するSinc数値解法が,Rileyや村井・森によって提案されている.ただしその誤差解析結果は,(1)未知関数に対する仮定に加え,(2)区間の幅やサンプリング数の大きさの制限が課されており,不自然なものであった.本講演では,これらの不自然さのない誤差解析結果が導出できたので,それを報告した.また同様の誤差解析結果は,Fredholm型に対して以前我々が提案したSinc数値解法においても成り立つことを示した.
小田 哲
(NTT情報流通プラットフォーム研究所)
[講演題目]
   高速データ検証の実装方式について

[講演概要]
   悪意あるデータの改竄をリアルタイムに検知するためにデータの完全性を高速に確認することが必要となることがある.本講演ではSCIS2007(1C2-3)において提案されたデータ完全性検証方式に対して高速実装方式を示し, 1.実際に利用する際のパラメータの設定指針,2.測定したアーキテクチャのカタログスペックに対してどの程度最適化されているのか,の二点について論じた.
木原 崇智
(筑波大学大学院システム情報工学研究)
[講演題目]
   単精度演算を利用した前処理法とその Cell プロセッサ上での実装

[講演概要]
   Krylov部分空間法では前処理の計算時間が大部分を占める場合が多く,前処理の高速化が重要である.本講演では,精度混合型Krylov部分空間法により前処理演算を単精度で行っても倍精度の解が得られることを示し,更に「Cell BEは単精度演算において極めて高い性能をもつ」「多項式前処理は疎行列ベクトル積を繰り返す」ことに着目し,Cell BE上での単精度疎行列ベクトル積の実装方法を提案し,数値実験により高い性能が得られることを示した.
舘 知宏
(東京大学大学院工学系研究科)
[講演題目]
   剛体折紙シミュレーション

[講演概要]
   展開図として与えられる任意の折紙が立体的に折られていく挙動をリアルタイムに計算し表示するシステムを実現するため,剛体折紙をシミュレートする手法を示した.ヒンジで互いに拘束しあうパネルとしてモデル化された折紙のキネマティクスを一般逆行列を用い て計算する.さらに折紙の性質を保持した展開図の調整を行うことで折紙に頻繁に発生する頂点の特異性を回避し,スムーズな変形を行えるようにする手法を示した.
林 賢治
(大阪大学大学院基礎工学研究科)
[講演題目]
   腫瘍形成モデルによる医薬品効果の数理解析と数値シミュレーション

[講演概要]
   Chaplain & Andersonによる腫瘍の浸潤に関するモデル, Anderson & Chaplainによる腫瘍が引き起こす血管新生のモデルにそれぞれ医薬品効果を表す項を導入し, それらの数理モデルに対して差分法による数値計算スキームを構築した. また, スキームを構成する際には, それらのモデルが持つ重要な性質である正値性の保存が破壊されないようにした. 結果, 腫瘍形成モデルにおける種々の医薬品効果の有用性が確認できた.
宮城 奈津子
(同志社大学大学院工学研究科)
[講演題目]
   最大流問題に付随するトーリックイデアルの生成系

[講演概要]
   ネットワーク最適化問題である最大流問題は,グラフの接続行列の始点と終点に対する行を取り除いた行列(縮小接続行列)を用いて,整数計画問題として定式化することができ る.この縮小接続行列に付随するトーリックイデアルの生成系を決定した.実際,縮小接続行列の整数核の整数基として,始点から終点への独立なパス全体がとれることを用いると,トーリックイデアルは,整数基であるパスに対応する2項式全体で生成され,飽和商の計算は必要ないことが示される.