日本応用数理学会 第1回 若手優秀講演賞 (2004年度)

日本応用数理学会では,年会の一般講演ならびにオーガナイズドセッションにおいて, 若手研究者(40歳未満: なお,2005年度より35歳未満とする) で優れた研究成果を発表した講演者を「若手優秀講演賞」として表彰することにしました.
   その第一回目の受賞者として 2004年度の年会の講演者の中から以下の方々が受賞されました(敬称略). なお,表彰式は,2005年4月19日の総会で行われました.

受賞者 受賞講演について
安達 隆
(福島県立医科大学)
[講演題目]
   元本確保型投資信託とオプションについて

[講演概要]
   元本確保型投資信託を元本のある割合を保証するというオプションの付いた投資信託としてとらえ, 無裁定価格付け理論に基づくことにより, オプションの公正価格が関連した確率退出時刻制御問題の値関数として導かれることを示した. また,危険証券のボラティリティが定数である場合には, 公正価格が明白な積分表現をもつことを利用して, オプションプレミアムを信託報酬に組入れることができることを示した. さらに,一般のマルコフ市場モデルにおいて, ハミルトン-ヤコビ-ベルマン方程式の粘性解として公正価格を特徴付けた.
小林 健太
(九州大学)
[講演題目]
   Stokes 極限波の一意性に対する数値的検証法

[講演概要]
   講演の内容は,Stokes極限波の大域的な一意性の証明に関するものである. Stokes極限波は,水面波の運動を記述する Nekrasov 方程式の解の極限に相当し, いわゆる頂点の尖った波を表している. 我々は,数値的検証法によって解の範囲を限定し, 更には縮小写像の原理によって解の一意性を証明することができた. Stokes極限波の大域的な一意性は,それ自体が未解決問題であったのに加えて, Stokes' conjecture と言われる未解決問題にも関係しており, その意味でも今回の結果は非常に重要であると言える.
須田 礼二
(東京大学)
[講演題目]
   高速球面調和関数変換法

[講演概要]
   球面調和関数変換はフーリエ変換に次いで応用上重要な関数変換であるが, フーリエ変換のような簡単な高速アルゴリズムがない. これに対し,著者らは高速多重極子展開法を利用した高速変換アルゴリズムを提案した. 講演では高速アルゴリズムの原理と計算量,誤差と数値的安定性の解析,偏微分方程式の求解への応用を述べ, 最新の成果として一般化高速多重極子展開法によるアルゴリズムのさらなる高速化について論じた.
曽我部 知広
(東京大学)
[講演題目]
   シフト複素対称線形方程式のための COCR 法

[講演概要]
   本講演では,複数のシフト量を係数行列に持つ複素対称線形方程式を効率良く解くアルゴリズムを提案した. 具体的には,ある一つの方程式に対して COCR 法を適用し, そこで生成されたクリロフ部分空間の基底を再利用して他の複数のシフト量を持つ方程式を解くことに成功した. また,COCG 法を用いても上述の方法が有効であることを数値実験により検証した.
藤間 昌一
(茨城大学)
[講演題目]
   特性曲線有限要素法に用いる数値積分について

[講演概要]
   特性曲線有限要素法は無条件安定などの特徴をもつ. ただし,特性項の数値積分誤差が計算を不安定化させ得ることも知られている. 本講演では移流拡散方程式の場合について数値積分の精度が Peclet 数に応じたある条件を満たし, Δt = O(√h) のときの,安定性解析を示した(Δt と h は,それぞれ,時間,空間の刻み). 従って,空間1次要素と時間2次精度スキームの組み合わせならば, 積分誤差を考慮しても安定であり最適収束性を得る. 更に,数値積分則の妥当性をリアルタイムに知るための指標値を提案し, 数値実験で観察されたその有効性を報告した. (本講演は九州大学 田端 正久 教授との共著講演である)
松本 純一
(産業技術総合研究所)
[講演題目]
   気泡関数要素安定化を用いた大規模気液二相流解析

[講演概要]
   製鉄過程の効率化,高機能マイクロマシンの開発といった製品生産効率や小型で高性能な製品開発を向上させるための流体現象は, 気体と液体とが混在している流れが殆んどである. このシミュレーションを行うためには次のことが要求される.
  1. 物性値の大きく異なる二流体を数値的に安定に計算する.
  2. 複雑な現象を再現するために高精度な解析を行う.
  3. 気体と液体の界面の正確な評価をする.
本講演では,実モデルの複雑な気液二相流解析を可能にする界面補足法を考え, 流体解析手法に気泡関数要素安定化有限要素法を採用して, 単一気泡流,転炉内流れ解析の3次元計算を行い本手法の有効性を示した.