日本応用数理学会 第5回 若手優秀講演賞 (2008年度)

日本応用数理学会では,年会の一般講演ならびにオーガナイズドセッションから若手研究者(当該年4月1日現在で35歳未満)で優れた研究成果を発表した講演者を「若手優秀講演賞」として表彰しております. 2008年度は,以下の6名の方が受賞されました(敬称略,50音順). 表彰式は,2009年4月の総会において行われます.

受賞者 受賞講演について
島田 知子

(大阪大学大学院情報科学研究科)
[講演題目]
   半導体における量子ドリフト-拡散方程式の適応型時間離散化手法

[講演概要]
   半導体シミュレーションにおいては,量子性を伴った電子輸送モデルが必要であり,非定常な量子ドリフト-拡散方程式の数値計算法を構成した.系の自由エネルギーの時間微分を導入することによって,時間離散化に対する適応型時間ステップアルゴリズムを提案した. このアルゴリズムを半導体素子のスイッチング特性に対して検証し,総時間ステップ数を大幅に削減して,電子分布の時間発展を精度よく計算できることを示した.
關戸 啓人

(京都大学大学院情報学研究科)
[講演題目]
   多項式回帰モデルにおけるカノニカルモーメントと離散可積分系を用いたD-optimal designの構成

[講演概要]
   実験計画においてD-optimal designとは最適な説明変数の組で,効率良く実験を行う際に必要となる. Studdenによって多項式回帰モデルにおけるD-optimal designはカノニカルモーメントを用いて求められており,それを基に本講演では固定点を通る場合についてカノニカルモーメントと離散可積分系である不等間隔離散戸田方程式を用いたD-optimal designの構成法を提案した.
谷尾 真明

(東京大学大学院情報理工学系研究科)
[講演題目]
   GIDR(s,L):一般化IDR(s)

[講演概要]
   大規模連立一次方程式の数値解法として, 最近,IDR定理と呼ばれる,従来とは全く異なる定理から導出されるIDR(s)法が注目を集めている. しかし,IDR(s)法は, その加速多項式の次数が1次であり,そのため係数行列が歪対称に近い場合,収束性が悪化することが知られていた. これに対して,本講演では, IDR定理を一般化し,IDR(s)法の加速多項式の次数を高次化したGIDR(s,L)法を提案し,この問題点を解決した.
中谷 隼

(東京大学大学院工学系研究科)
[講演題目]
   品質情報連鎖に基づいたプラスチックリサイクルのシステム設計

[講演概要]
   廃プラスチックと再生樹脂の品質の関連性を行列形式で記述し,樹脂の需要側からの要求品質と比較することで,意図した用途への適用可能性の検討を可能とした. 要求品質を満たさなかった場合,要求品質を制約条件とした線形計画によって,最低限必要とされる廃プラスチックの品質改善とリサイクルプロセスの単位操作が特定され,その場合の環境負荷の評価結果と合わせて,多面的な判断基準に基づいたシステム設計を可能とした.
長谷川 徹

(アイベックステクノロジー株式会社)
[講演題目]
   プライム符号を拡張した疑似直交符号族の構成と光CDMAにおける性能解析

[講演概要]
   光CDMAのための符号として相関特性のよい符号が求められている. 本講演では Extended Prime Code を拡張した光CDMAのための符号の族を提案し,提案した符号についての自己相関,相互相関に関する定理を示した. また,理論通信性能解析の結果,符号の一部は同時に通信を行うユーザ数が多いときに, Prime Code よりも優れた通信性能を持つことを示した.
柳澤 大地

(東京大学大学院工学系研究科, 日本学術振興会特別研究員)
[講演題目]
   流動係数に対する群集の出口への集まり方の影響

[講演概要]
   単位幅の出口を単位時間当たり通過する人数を表す流動係数は,避難設計に用いられる重要な指標である. 本研究では,(1)衝突,(2)方向転換,(3)譲り合い,という出口付近で頻繁に観測される三つの現象をモデルに組み込み,流動係数の実験データを再現するモデルの作成に成功した. さらにこのモデルを解析することにより,出口付近のどのような位置に障害物をおけば流動係数を増加させることができるか調べられた.