日本応用数理学会 論文賞 2000年度

2000年度日本応用数理学会論文賞は,同表彰規定に基づいて, 1997年 3月(第 7巻 1号)から 1999年12月(第 9巻 4号)の 「日本応用数理学会論文誌」および「JJIAM」に発表された論文の中から計 3編に論文賞が贈呈されることに決まり, 2000年10月の年会において著者に表彰状が授与された.

論文賞
理論部門 [論文]
   連続Euler変換と減衰の遅い関数のFourier変換への応用 (日本応用数理学会論文誌 Vol.9,No.3,1999,pp.109-121)

[著者]
   大浦 拓哉(京都大学数理解析研究所)

[受賞理由]
   Fourier積分,Bessel積分等の振動積分は,無限遠での減衰が遅い場合には,数値計算が困難であることがよく知られている. 本論文はこの古典的な問題に対して,振動関数を交代級数を連続化したものと見立てて,交代級数に対するEuler変換を連続化したものを振動関数に適用して,高速で,精度よい数値積分法を実現しようとするものである.
   減衰の遅い振動積分の数値計算に対しては,いくつものアプローチが既に知られている. 本研究はこの古くからの問題に今までと異なる視点からの有効なアプローチを示している. 理論的にも応用的にも新たな貢献を含むものとして,本論文誌での理論部門での授賞にふさわしいものと評価された.
ノート部門 [論文]
   数値積分誤差を用いた新しい多項式の零点の解法 (日本応用数理学会論文誌 Vol.9,No.2,1999,pp.65-76)

[著者]
   鈴木 智博(山梨大学工学部), 鈴木 俊夫(山梨大学教育人間科学部), 武藤 秀夫(山梨大学教育人間科学部)

[受賞理由]
   多項式 f の対数微分をJordan閉曲線 Γ に沿って周回積分すれば, Γ内部の f の零点の個数が得られることはよく知られている. 本論文は,Γ が円の場合にはこの周回積分の台形則による数値積分の理論評価が容易であることを利用し,円の位置を移動させながら半径を減少させていくことで, f の零点を求める反復数値解法を提案している. 幾つかの例に対して,有効である数値例も与えられている.
   本手法が,汎用的な実用手法として既存手法より優れているか否かについては,現時点では必ずしも明らかとは言えないが,反復法に対する新しい視点を提起した斬新さが,本論文誌のノート部門での授賞にふさわしいものと評価された.
JJIAM部門 [論文]
   The motion of three point vortices on a sphere (JJIAM,Vol.16,No.3,1999,pp.321--348)

[著者]
   Takashi Sakajo (北海道大学)

[受賞理由]
   本論文に完全流体に発生した渦糸と呼ばれる渦が複数発生したとき,その間の相互作用によって,渦糸がどのような運動をするかという流体力学における基本的な問題を扱ったものである. 平面上での渦糸3っの挙動はすでに解析されているが,著者は地球上の大気に発生した渦運動という具体的な問題を念頭において,球面上での渦糸の挙動を考察している. 本論文の応用数理として卓越している所は,球面上での渦糸の振る舞いという新しい問題に挑戦して,そこでは3っの渦糸は有限時間では決して衝突することがないことを解析的に示すとともに,更に,そのときの渦糸の状態パターンを知るために,解析方法を相補するものとしての数値シミュレーションを駆使することから,いくつかの新しい性質を発見していることである. このような純粋に理論解析的手段だけでは解明が困難な問題に対して,理論解析法と計算機解析法を相補的に用いることは,応用数理において有効な手法であることは今さらここで述べることもないが,本論文は正にその成功例の一つでもある.