日本応用数理学会 論文賞 1997年度

1997年度日本応用数理学会論文賞は,同表彰規定に基づいて, 1994年 3月(第 4巻 1号)から 1996年12月(第 6巻 4号)の 「日本応用数理学会論文誌」および「JJIAM」に発表された論文の中から計 3編に論文賞が贈呈されることに決まり, 1997年10月の年会において著者に表彰状が授与された.

論文賞
理論部門 [論文]
   ランチョス・プロセスに基づく横型反復解法 (日本応用数理学会論文誌 Vol.5,No.4,1995,pp.343-360)

[著者]
   張 紹良(名古屋大学,現東京大学),藤野 清次(広島市立大学)

[受賞理由]
   本論文では大規模な連立1次方程式を解く種々の反復解法が,ランチョス多項式と加速多項式との積を考えることによって,統一的に導けることを指摘した. さらにこの枠組みをもとにしてGPBi-CG法という新しい計算手法を導出し,この手法が,実係数のみならず,従来困難が多かった複素係数問題についても高い収束性をもつことを示した. 複素係数の連立1次方程式は,半導体設計,デバイス・シミュレーション,交流回路などの分野にしばしば現れ,応用上重要である. 請文は分かりやすく書かれており,応用数理的なアプローチの有効性の一つの典型例を示している点からも高く評価された.
応用部門 [論文]
   地震の時空間分布に関するスケーリング理論 (日本応用数理学会論文誌 Vol.6,No.4,1996,pp.373-391)

[著者]
   松葉 育雄(千葉大学)

[受賞理由]
   本論文では,地震現象を自己組織化現象とのアナロジーで捉えることにより,ミクロなレベルでの歪みゆらぎが従う法則から,非線形効果などを通じて生じたマクロなレベルとしての地震現象に関する普遍的なスケーリング則を導くことが可能な理論を提案した. これから,地震が自己相似的な普遍的性質を呈することが自然に導き出され,地震の頻度分布に関するグーテンベルク・リヒター則の係数が世界各地で共通であることが説明できる.理論構成と観測値の比較検討がバランス良く議論されていて,広い読者に読みやすく書かれていることが高く評価された.
実用部門 [論文]
   実験計測誤差を最小化する変分原理に基づくモアレ干渉法・有限要素ハイブリッド法(弾性変形場の場合) (日本応用数理学会論文誌 Vol.6,No.3,1996,pp.233-252)

[著者]
   西岡 俊久(神戸商船大学), 池北 浩記(神戸商船大学), 玉井 和孝(神戸商船大学)

[受賞理由]
   本論文は,有限要素法によって離散化した力学モデルと,レーザーによるモアレ干渉法とを組み合わせて,計測誤差の影響を最小化し,かつ支配方程式を満たすような,物体の変形場や応力場等を見い出す方法を提唱し,その有効性を示した. 実用上の重要な問題に対して,既知の方法を組み合わせて,困難の解決法を提示し,実用上の必要性に応えたことが著者の独創的な点である. 論文が分かりやすく,かつ多方面の問題に拡張可能である点も高く評価された.