日本応用数理学会 論文賞 1995年度

1995年度日本応用数理学会論文賞は,同表彰規定に基づいて, 1991年 3月(第 1巻 1号)から 1994年12月(第 4巻 4号)の 「日本応用数理学会論文誌」および「JJIAM」に発表された論文の中から計 3編に論文賞が贈呈されることに決まり, 1995年 9月の年会において著者に表彰状が授与された.

論文賞
理論部門 [論文]
   無限次元統計多様体 (日本応用数理学会論文誌 Vol.4,No.3,1994,pp.211-228)

[著者]
   上林 達(東芝R&Dセンター)

[受賞理由]
   本論文は,区間[0,1]上の絶対連続な正の確率密度で導関数が自乗可積分な族がなす多様体の性質を調べたもので,特に,この空間には計量的で捻れのない共変微分が一意的に存在すること,任意の2点はただ一つの最短測地線によって結ばれることなどを明らかにしている. 確率分布族の空間の微分幾何構造は,統計的推定の高次漸近理論の解析などのために重要なものであるが,今までの研究は有限次元空間に限られており,無限次元への拡張は困難な未解決問題の一つであった. 本研究は,初めて,無限次元への研究の道を開いたもので,その意義は高く評価できる.
応用部門 [論文]
   高次と低次のモードの省略可能なモーダル周波数応答感度解析手法の開発 (日本応用数理学会論文誌 Vol.4,No.2,1994,pp.141-164)

[著者]
   小机 わかえ(日産自動車), 萩原 一郎(日産自動車), 馬 正東(ミシガン大学)

[受賞理由]
   本論文は,機械系の動的感度解析技術として著者等がすでに提案しているモード合成法に精密な誤差解析を加え,系の応答を表現するために必要なモードの範囲,およびそれらのモードの感度を十分な精度で表現するのに必要なモードの範囲を求めることによって,この方法を実際に適用する際の具体的なモードの選び方を明らかにしたものである. また,豊富な実験でその有効性を確かめている. この成果は,構造振動一音場達成系を含む複雑な系の動的感度解析のための実用的方法を与えるもので,応用技術の向上に大きく貢献するものである.
実用部門 [論文]
   残差ベクトルを用いた標準固有値問題の部分空間解法 (日本応用数理学会論文誌 Vol.4,No.4,1994,pp.299-325)

[著者]
   片山 拓朗(佐世保重工業), 清田 秀二(佐世保重工業), 相木 光博(九州東海大学), 大脇 信一(熊本大学), 平井 一男(熊本大学)

[受賞理由]
   本論文は,行列のある近似固有ベクトルとその残差ベクトルの直交性に着目し,それらのベクトルの張る部分空間で固有ベクトルの最良近似を求め,部分空間の基底を逐次拡大しながらこの手続きをくり返すことによって固有ベクトルを求める方法を提案している. 理論をわかりやすく展開し,豊富な実験によってこの方法が従来の方法をしのぐ場面があることを示している. これは,大型疎行列の固有値問題を解くための従来の方法を補う有力な一手法を与えたもので,その意義は大きい.